PALSって何を学ぶためのコース?

*2018年9月1日追記、随時、加筆修正中です。


記事を一部、修正追記しました。

 最近、ふと、ウェブの分析を確認すると、このページになぜかアクセスが多く驚きました。ただ、この記事を書いたのが、数年前になるので、現在のPALS事情も合わせてちょっとずつ更新していきたいと思います。

大まかな概要は変わりませんので、ご安心ください。


PALSの日本国内での現状とPALSとは?(2018.9.1)


   皆さんのPALSのイメージはどのようなものでしょうか。
看護師さんに聞くと以下のようなイメージを持っているようです。

小児の2次救命処置・・・
難しい・・・
小児だけのコース・・・
金額が高い
2日間が長い
テキストがたかい・・

今から約5年前は、当会でPALSやPEARSを受講にきた人や、PALSを受講した人に話をきくとこのような答えが大半でした。でも、時代の変わりとともに、ちょっとずつ変わってきているようです。

特に、小児だけのコースという意見や金額が高い関連のことはあまり言われなくなってきました。

今から5年ほど前、PALSの開催金額は45000円が標準くらいだったのですが、今では35000円前後まで下がってきています。なぜかと言われると、単純に受講生がいないからのような気もしますが・・・

 

看護師の受講環境もだいぶ、よくなってきているのでしょう。

最近は、看護師が受講して辛かったという感想を聞くのは、一部の特定のサイトだけになってきた気がします。(もちろん、当会ではありませんよ。どことも言えませんが・・・)

PALSの本質はくり返しになりますが、

 

状態の異変に気付くための評価アプローチを学習し、異常を認識し、評価し、介入し、安定化せること

 

よく講習でたとえ話をするのですが、

 

重度の脱水の子供が、街中のこどもクリニック以外に来院した状況をイメージしてみてください。

子供をまったくみたことのない医師や看護師が、その子供に対応して、適切に対応することが可能でしょうか。

おそらく難しいのでは?そんな子供はみれないぞ、と思うのではないでしょうか。

 

そこで、子供はみれないで終わるのではなく、

適切に迅速に重症度を判断し、介入を行い、適切な医療が提供できる機関へ橋渡しをする。それがPALSなのです。

 

今回の例では、脱水の子供に対して、ショックであればルート確保して、(子供の静脈路なんてとれないよ⁉️と思うかもしれませんが、だから骨髄路なわけで)輸液をボーラス投与して、時間を作り、次の医療機関へ搬送しようということになります。

 

PALS受講へのハードルが下がってきている現状は、とってもよいなと考えています。



PALSの受講状況(すいません、こちらは数年前の記事です。参考までに。)


現在、日本国内ではAHAと契約しPALSを開催している団体は


日本小児集中治療研究会(JSPICC)
日本ACLS協会
福井県済生会病院-横浜ACLS
日本医療教授システム学会

日本BLS協会


です。

 日本小児集中治療研究会(JSPICC)

2002年より講習を開催しています。2012年までの受講者数が6320人
受講者の90%以上が医師です。看護師は残り10%内のさらに、救命士などと一緒なので、数百人といったところでしょうか。

御存知の通り、小児集中治療研究会は、日本にPALSを導入した初めの団体であり、AHAと契約をした国内初めてのITCです。
開催初期のころは看護師の受講はできなく、医師に広める必要があったのでしょう。最近は積極的に看護師に門戸を開き、公式発表はありませんが、看護師PALSインストも認めているとの話も聞きます。
ただ、やはり団体の特色から医師向けのPALSと言えるのかなと思います。

 

2018追記)

インストラクターの先生がたは、ほんとに小児医師でも一流どこの人々なので、医師の受講生のかたにはお勧めです。

 日本ACLS協会(JAA)

2007年から2012年で4145人、看護師が26%とのことなので、1000人くらいでしょうか。JSPICCと比較すると看護師の受講生が多いですが、それでも、1000人前後。

 

2018年追記)

JAAの看護師の受講生はもっと増えていると思います。つい先日、某団体のPALSにお邪魔してきましたが、看護師のインストラクターもたくさんいるはずです。

 

福井県済生会病院-横浜ACLSやJBAの人数など、現状は再度、調べてお伝えしたいと思います。


PALSって何を学ぶの?(9.1修正中)


今回は、PALSの本質は何を学ぶのかとうことです。

皆さまが御存知の通り、
子どもが心停止に至る経緯は呼吸原性(いわゆる体の中の酸素がなくなってしまう低酸素血漿)が80%くらいと言われています。
不整脈による突然の心停止は、子どもではほとんどなく10~20%です。

そして、低酸素から心停止に至る経緯には・・・

呼吸) 
呼吸窮迫から呼吸不全を経て、心肺機能不全、心停止へ
循環)         ↑
代償性ショックから低血圧性ショックを経て心肺機能不全、心停止

といった経路があります。

大切なのは、この心停止に至る経緯の初めの段階は、子どもにおいて11時間前後前に身体所見の異常やバイタルサインの変動が生じる場合があると言う事です。

つまりは、その異常を察知し、早期に介入すれば心停止は防ぐことができるということ。

そのためのスキル、異常を認識するためのトレーニングコースがPALSやPEARSです。

そして、あくまでも、専門的な治療をするものではなく、子どもが次のステージに行く前に病態を安定化させ、専門医に診察を受けるまでの時間をかせぐというスタンスです。

たとえば、夜間、小児科医のいない病院で、PALSを知っている医師や看護師がいれば、乳児にとって致死的となりやすい脱水による循環血液量減少性ショックの可能性に気付き、輸液をボーラス投与し、専門の病院へ搬送することができます。

PALSやPEARSの認識、評価、安定化の概念は、子どもにとって、その数時間で未来が変わる可能性を秘めているのです。

子どもの専門治療を学ぶコースではなく、子どもの初期対応を標準化したコースがPALSやPEARSなのです。


PALSは成人にも使えます。(修正中)

PALS&PEARSは、決して専門的な治療を学習するコースではなく、初期対応の基本を学習するコース・・と前回を振り返りつつ、、、

では、PALSやPEARSで学習する評価アプローチは成人には使えないのでしょうか。

小児専門でしょ・・・
使えないんじゃない・・・??

と、つっこみが入りそうですが、

もちろん、そんなことはなく、成人にも使用することができます。

それは、心停止に至る経緯は成人でも突然の不整脈以外は同じだからです。

最近、そこかしこで、RRSやMETといった急変時にいかに早期に対応をするかというシステムが、脚光を浴びつつあります。すでに導入している病院も多いのではにでしょうか。

これらのシステムの根幹となるのが、ベッドサイドの看護師の異変の認識です。状態の異変を早期に認識し、評価、介入を実施することです。

この評価の家庭で行われるのが、呼吸数はそれくらいか・・呼吸努力の有無は・・といった
まさにPEARSやPALSの評価アプローチなのです。

成人の2次救命処置はACLSがあるじゃん

って思った人もいるかと思いますが、実はACLSは心停止前10分間の管理から心停止後~自己心拍再開後を対象としたコースなので、それ以前に起きうる状態の悪化の認識、評価、安定化には対応していません。

つまりは、AHAの急変対応の標準化コースはBLS-ACLS-PEARS-PALSでようやく全体像が捉えられる設計になっています。

ACLSでもう急変対応は一通りやった!次はどうしよう・・と思っている人や、状態異変の認識、評価、安定化のスキルを学びたい人にとってPEARSやPALSは、いちばん身近な学習することのできる環境です。